◆村上記念病院糖尿病新聞 2008年5月9日発行
糖尿病の合併症
内科 佐藤Dr
糖尿病の合併症には大きく分けて急性合併症と慢性合併症があり、慢性合併症はさらに大血管合併症と細小血管合併症に大別される。

大血管合併症
ある程度太い血管の動脈硬化により起きる。動脈硬化の起きる仕組みはまず高濃度の血糖が血管の内側を傷つけることで炎症を起こし、さらにコレステロールの沈着が起こることで血管の硬さが増す。硬さが増すだけでなくプラークと呼ばれる膨らみができ血管が狭くなり血液が流れにくくなる。またプラークは破れることがあり、そこに血栓ができ動脈を塞いでしまうこともある。血流が低下あるいは途絶して起こる病気には狭心症心筋梗塞脳卒中閉塞性動脈硬化症などがある。

細小血管合併症
糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症がある。糖尿病に特有の合併症であり3大合併症と呼ばれている。

糖尿病神経障害
3大合併症の中では最初に現れることが多い。高血糖により抹消の神経線維が障害されるために起こる。神経は体中に分布しているため障害された部位によって全身に様々な症状が現れる。

糖尿病網膜症
日本では失明の大きな原因となっている。網膜への血液の流れが悪くなり徐々に血管の内側から傷み、網膜の出血や浮腫、毛細血管の閉塞を起こして生じる。自覚症状がなくても定期的に眼底検査をして糖尿病性網膜症の有無や網膜症の進行の程度を知ることが必要。

糖尿病腎症
3台合併症のなかでは最も遅く現れる。他の合併症と同様に自覚症状の乏しいまま進行する。日本では透析導入の原因疾患の第1位で年々増加傾向にある。高血糖状態が続くと腎臓の血管が障害され、必要な成分まで尿中に漏れ出るようになる。さらに障害が進むにつれ腎機能が低下し余分な水分や体にとって不要な物質を体の外に出すことができない状態に陥る。

合併症の予防
合併症は一旦起こってしまうと元に戻すことはなかなか困難である。したがって予防することが重要ということになる。これらの血管障害に基づく合併症が出現するには数年から十数年かかるので、糖尿病になって間もない人はもちろん、糖尿病になって何年か経つ人でも、これまでの血糖コントロールが良ければまだ合併症は起こしていないと思われ、合併症の予防は十分可能と考えられる。
あきらめずに血糖コントロールを続けることが肝要である。

村上記念病院糖尿病チーム
村上記念病院
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