◆村上記念病院糖尿病新聞 2007年6月8日発行
「食習慣と消化器疾患(2)」
講師 内科医 佐藤医師
どのような生活習慣が消化器癌の発生に関わっているか。

1、食道癌
(1)喫煙・飲酒習慣― 毎日のようにたばこを20本以上かつ日本酒を2合以上飲んでいる人はそうでない人の30倍危険度が高くなる。
(2)熱い食べ物― 口の中がやけどするほど熱いものを好んで食べていると食道粘膜を傷つけ、危険度が高まる。
(3)野菜・果物摂取― 特に喫煙・飲酒習慣による危険度を抑制する。

2、胃癌
(1)塩分多食― 塩分摂取量の多い地域・時代では胃癌が多くみられる。
(2)喫煙・飲酒習慣― 食道と同様に喫煙や飲酒の習慣の影響を受ける。特に食道に近い胃上   部では喫煙習慣の影響をより大きく受ける。
(3)ヘリコバクター・ピロリ感染― ピロリ感染と関連の深い萎縮性胃炎があると胃癌ができやすい。感染者全てに胃癌が発生するわけではない。
(4)野菜・果物摂取― ビタミンが胃癌の発生に抑制的に働いていると考えられる。

3、大腸癌
(1)肉類摂取― 赤身の肉はほぼ確実なリスク要因とされている。動物性脂肪やコレステロール摂取による胆汁酸分泌の増加、調理や代謝過程で生じる発癌物質(ニトロソ化合物)などによるとされている。
(2)脂肪摂取― 総脂肪や飽和脂肪の摂取量が多いと大腸癌の発生率が高まる。
(3)喫煙・飲酒習慣― 喫煙と大腸癌発生との関連については一定の結論が得られていない。アルコールは大腸癌発生の一つのリスク要因であり、直接的には代謝の過程で生じるアルデヒドによる細胞障害、間接的にはビタミン類の不足による影響が考えられている。また、遺伝的にアルコールの分解能力の低い人のほうが大腸癌発生の危険度が高まる。
(4)食餌性繊維― 便のかさを増し発癌物質を吸着し腸内通過時間を短縮する。これらが大腸癌発生の危険度低下につながると考えられている。また便内の酸性度を下げ、嫌気性菌による腐敗物質の産生を抑制することも関連していると考えられる。
(5)運動習慣― 身体運動は大腸癌のリスクを低くする。これは運動が腸管の蠕動を亢進させ便の腸内停滞時間を短縮する、免疫能を向上させる、ストレスを解消させるなどの理由によると思われる。
(6)野菜・果物摂取― 大腸癌のリスクを下げる。これは微量栄養素や食物繊維の働きによると考えられる。特に微量栄養素のカロテノイド、ポリフェノール、フラボノイドは抗酸化作用などにより発癌に対し抑制的に働く。

4、胆道癌・膵臓癌
 胆嚢癌は多量の脂肪摂取や肥満が主な要因としてあげられる。胆石との合併症も多い。
 膵臓癌については原因解明のための疫学的研究が遅れている。国際的に指摘されている要因は、喫煙・飲酒習慣、肉、脂肪、エネルギーの取りすぎで、日本ではさらに運動不足や肥満も要因として指摘されている。

村上記念病院糖尿病チーム
村上記念病院
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