◆村上記念病院糖尿病新聞 2005年6月27日発行
糖尿病性腎症のおはなし
内科医 五島

1) 透析患者さんは増えています!

糖尿病の慢性合併症である「糖尿病性腎症」が悪化すると、透析療法を受ること
になります。糖尿病性腎症によるものは増加傾向にあり、1998年からはトップになっています。
  ○ 腎不全での透析導入:年間約30000人
  ○ 1998年〜第一位:糖尿病性腎症(約10000人)

「透析療法」とはどういうものでしょう?

様々な原因により腎臓の働きが低下し(10%以下)、腎不全の状態になった場合行われる血液浄化法
腎不全かどうかは、いろいろな面から見て診断しますが血液検査では
  ○ クレアチニン   :8.0r/dl以上
  ○ BUN(尿素窒素):100r/dl以上 が目安となります。

「透析」をすれば腎臓は治るの?

残念ながら答えはNo!です。
一度腎不全になってしまうと、透析をしても腎臓の働きは元に戻りません
透析は、本来の腎臓の代わりに、体の中に貯まった余分な水分や老廃物を取りに除く対症療法にすぎないのです。

2) 腎 臓

・脊柱の両側に左右各1個
 背中寄り(後腹膜臓器)
 (腰に手を当てたやや背中寄り)
 
働 き
(1) 尿を作る:体内の不要な物質や毒性物質を排泄
(2) 血圧の調節
(3) 血液を造るホルモン(エリスロポエチン)生産
(4) ビタミンD活性化:骨の代謝の調節

3)どんな病気?

糖尿病性腎症は糖尿病の3大合併症のひとつです。
糖尿病にかかって10年以上経過している人で、糖尿病のコントロールが悪く、高血糖状態が長い間続いていると、腎臓の糸球体の毛細血管に障害が起きてきます。そのため腎機能が低下して、尿の中にたんぱくが出てきたり、高血圧やむくみなど腎炎と似た症状が起こります。進行すると、腎不全から尿毒症となり透析が必要になります

4)どうしてなるの?

腎臓の中にある糸球体は、血液中の老廃物を尿中に排泄するろ過器の働きをしています。糖尿病で高血糖状態が続くと、糸球体を構成している細かい血管が動脈硬化を起こして固くなり、糸球体の組織の目が粗くなって、ろ過機能が低下します。するとたんぱく質が糸球体の網の目を通り抜けてたんぱく尿が出たり、尿をつくる働きが低下して老廃物が排泄されなくなり体内にたまる糖尿病性腎症になります。

5)糖尿病性腎症での腎臓の変化

糖尿病によって高血糖の状態が続くと、メサンギウム細胞にブドウ糖が大量に流れ込みます。そして細胞がそれを処理しきれなくなり代謝異常を起こします。
ブドウ糖とたんぱく質が結合した「糖たんぱく」を、メサンギウム細胞が過剰に生産するようになります。そのため、メサンギウム基質が肥大して周囲の毛細血管を圧迫します。すると毛細血管の内腔が狭くなり血流が悪くなります。 血液を濾過する糸球体の機能が低下します。

 村上記念病院糖尿病チーム

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