野菜果実過敏症(OAS)
野菜果実過敏症:OAS(Oral Allergy Syndrome)とは
果物や野菜を食べたときに口やのどなどに違和感やかゆみを感じたことはありませんか?
口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome:OAS)と専門的には呼ばれておりますが、花粉症の患者さんでよく見かけます。
花粉症と関係が深いのですが、多くの患者さんは花粉症と関係があるとは気づいていません。
花粉症の人が果物アレルギーを起こし易いのはなぜでしょうか?
その理由は花粉アレルゲン(原因となる抗原)と特定の果物、野菜が持つアレルゲンが共有するためです。
口から入ったアレルゲンと花粉症を起こす抗体が反応してアレルギー反応を引き起こします。
スギ花粉症患者さんにおいてもOASの合併率は約7.4〜16.5%にものぼり稀な疾患ではありません。
従来はOASは花粉症に注目されていましたが、アトピー性皮膚炎の患者さんの28%、あるいは喘息の患者さんの22%にもみられるほど多いというデータがあります。
OASの症状
患者さんは特定の果物、野菜の摂取の数分後(15分以内)に直接触れた唇や舌、のどの奥、唇のかゆみ、腫れを引き起こします。
じんましんが出たり、最悪の場合はアナフィラキシーを起こし救急車で病院に駆け込む場合もあります。
基本的には、原因となるものが粘膜に直接触れることで生じるアレルギー反応です。
口腔アレルギー症状
発作時間 |
症状 |
〜15分以内 |
口腔刺激感、かゆみ感 のどがつまった感じ
口唇の腫れ 口腔粘膜の水泡
顔面の発赤
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15〜30分 |
蕁麻疹 結膜炎/まぶたの浮腫
喘息 アナフィラキシー
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30〜60分 |
腹痛 吐き気 嘔吐 まれに下痢や鼻炎 |
OASの対策
対策1:自分に果物アレルギーを起こす果物を覚えて予防!
花粉症の人はもちろん、花粉症がない人でも起きる事があります。
何か果物(野菜)を食べた時に口に違和感を覚えた時はその果物(野菜)の種類をまず記憶しましょう。
バラ科果物の場合はリンゴ、モモ、サクランボ、洋ナシ、ナシ、スモモ、アンズ、イチゴ、ウメ、ビワなどは、
共通のアレルゲンを持つので、どれかを食べて違和感を覚えた時は他のバラ科果物に対しても注意が必要です。
検査
疑いのある食物がある程度判明してきたら、確認のために比較的容易にできる血液検査(RAST)があります。
本院でも通常行う検査です。
しかしこの検査の陽性率はリンゴで70.8%と結構高いものの、モモで4.2%、メロンで33.3%と抗原の種類によってかなり格差が大きいので注意を要します。
確定診断の決め手となる確立が高いのが皮膚テスト法で、本法は新鮮な果物に針を刺した後、前腕屈側皮膚に刺すという方法で感度が高いのですが、
この検査法は万一のショックに対する準備が必要です。
対策2
果実過敏症の場合、生の果物はダメですが、料理など加熱処理した野菜や果物では、摂取可能となることが多いので、調理法の考慮も対策の一方法といえます。
生で食べず、加熱して食べてください。
リンゴの場合は、生リンゴではだめでも、リンゴジュースやリンゴジャムは加熱してあるためにアレルゲンが変化していてアレルギーが起こらない事があります。
生リンゴがだめでも焼きりんごは出ないことは多いです。
100%リンゴジュースなどでも、熱処理がされているためか、問題は少ないようです。
トマト果実抗原は熱に不安定であり、加工品であるトマトケチャップ、トマトジュース、熱を加え調理したトマトではOASは惹起されないとされています。
しかし、これらも絶対安心というものではありません。
最近、100%リンゴジュースで症状の出る患者さんや、トマトジュースによるOASの報告がありました。
対策3
原因食物と分かっていても患者さんがどうしても摂取したいという場合があり、OASが軽い場合のみ抗アレルギー薬による薬物療法の有効性が報告されています。
また薬物療法に関して、予期せぬ原因食物摂取による重篤な発作が出現した時のために、ステロイド剤、
抗ヒスタミン薬を常時持っておくことも、不測の事態を回避するための重要な手段です。
対策4
花粉曝露の軽減により花粉に対するアレルギーが減少低下し、OASも軽快した例が報告されており、花粉曝露の回避も大切です。
OASは、原因食物が経時的に増加し(他の果物でも発症するようになる)、重症化(喘息、アナフィラキシー症状)する症例が増えています。
今まで食べられていた食物での発症は予期できないことより、経口抗ヒスタミン剤と経口ステロイド剤の携帯が必要といわれています。
残念ながら果実過敏症は今の所『原因物質を食べない』以外には確実な予防がなく、根治は今の現在の医学では難しいとしかいいようがないのです。
しかし近い将来必ずOASの治療は開発されると思います。
各花粉症と共通する食物
スギ、ヒノキ |
トマト(ナス科) メロン スイカ(ウリ科) |
ヨモギ |
ニンジン セロリ(セリ科) リンゴ キウイ(マタタビ科)
エダマメ グリンピース(マメ科)ナス(ナス科)ヘーベルナッツ(カバノキ科)クルミ(クルミ科)マスタード(アブラナ科)ハチミツ
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ブタクサ |
スイカ メロン キュウリ ズッキーニ カンタロープ(ウリ科) バナナ(バショウ科) |
カモガヤ |
トマト ジャガイモ(ナス科)メロン スイカ(ウリ科)オレンジ (ミカン科)セロリ(セリ科)バナナ(バショウ科) |
イネ科 |
トマト ジャガイモ(ナス科)メロン スイカ(ウリ科)オレンジ (ミカン科)キウイ(マタタビ科)リンゴ モモ(バラ科) |
シラカバ (カバノキ属) |
リンゴ モモ ナシ 洋ナシ サクランボ イチゴ うめ スモモビワ アーモンド アンズ(バラ科)ニンジン セロリ フェンネル(セリ科)
ヘーゼルナッツ(カバノキ科) キウイ(マタタビ科) クルミ(クルミ科) ジャガイモ(ナス科) ブラジルナッツ(サカリバナ科)
ピーナッツ(マメ科)ココナッツ(ヤシ科)キウイ(マタタビ科)オレンジ(ミカン科)
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オオバヤシャブシ (ハンノキ属) |
リンゴ モモ ナシ サクランボ プラム イチゴ ビワ(バラ科)
スイカ メロン(ウリ科)トマト(ナス科)キウイ(マタタビ科)
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カモガヤ花粉症を持つ人がゴム製手袋をはめるとラテックス過敏症を伴う場合もあります。
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